新型コロナ緊急事態宣言②|マンション管理組合に推奨される取り組み
Writer’s Nest(ライターズ・ネスト)代表WEBライター&マンション管理士の吉田です。
新型コロナウイルス大流行による緊急事態宣言を最初に適用された大阪で、マンション管理士・消防設備士として活動しています。
前回は、
「新型コロナ緊急事態宣言①|管理組合のとるべき対応について」
として、理事会や総会の延期などについて解説しました。
続く今回は、マンション全体の管理組合として意識しておくべきことや、推奨される取り組みについて書いておきます。
マンションにおいて気を付けるべきこと
マンションにおいて新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために気を付けるべきは、まず
「マンションと新型コロナウイルスの関係をしっかり把握すること」
です。
マンションは閉鎖的であることをよく認識する
マンションでは、複数の家庭が一つ屋根の下で共同生活を送っていることは周知の事実です。
建築基準法や消防法上でもマンションは共同住宅として分類されており、共用の廊下や階段、エレベータなどの設備があります。
もちろんエントランスも共用であり、住人の基本的な動線もほぼ統一されているといえます。
このように考えると、マンションという住空間はやはり閉鎖的です。
また、病院やホテルなどの施設での新型コロナの感染拡大が取り沙汰されています。
しかし、よく考えてみると建物の構造としてはマンションと大差はありません。
※もちろん防火上の理由などから共用廊下が大気に開放されているマンションも多く、その場合は換気という観点からするとまだリスクは低いと考えられます。
マンションにおけるリスクをよく理解する
万一新型コロナウイルスに感染してしまった場合、高齢者であればあるほど重篤化するリスクは高いと考えられています。
昨今は高齢者比率が高いマンションも珍しくなく、棟内で感染が確認された場合にはより的確な対処が必要になります。
また、マンションには宅配業者や設備関連業者などの出入りが多いという点もあります。
これは住人の利便性を重視するというマンションのメリットにもなっているため、難しいところです。
それに、排水管や換気口などを介して感染が拡大することも考えられます。
必要以上に感染を恐れてしまうこともよくありません。どんな建物や環境にも感染リスクはあるものです。
その中でも、マンションの特性をよく理解し、またそこに潜むリスクもあるということを正しく理解することで、適切な対策を立てられることにもつながります。
管理組合に推奨される新型コロナ対処の具体例
続いて、管理組合の皆様でどのように取り組んでいくべきかの具体例をいくつか紹介します。
マンションに新型コロナウイルスを持ち込まないよう意識する
今回のコロナ騒動を受けて、大切なのは
・外出先からの帰宅時、マンションにコロナウイルスを持ち込まない
という意識です。
不要不急の外出自粛やテレワークなど、外出や人と会う機会を削減できる方が増えています。
しかしその一方で、どうしても電車で出勤や移動することなどが必要不可欠である方もいます。
これは管理組合での取り組みというよりは、管理組合の構成員である区分所有者や居住者の皆様各自が十二分に注意すべきことです。
外出から帰宅する際の消毒
マンションにコロナウイルスを持ち込まないため、本当はすべての人が建物に入る段階で身の周りを消毒できれば理想ではあります。
とはいえ、個人間の意識差もありますし、そう簡単に徹底できることでもありません。
その中でまず取り組みやすいことから始めるとすれば、
①エントランスに消毒液を設置し、使用の意志を周知徹底する
②マンション内各戸で消毒液を積極的に使用し、専有部への入室時の消毒を徹底する
ということになります。
エントランスの消毒液で手指をしっかり消毒すれば、エレベーターのボタンなど共用部を介した感染リスクを抑えることができます。
また専有部に入室する段階で、手指はもちろん、スマホやメガネなど、身の周りのウイルスが付着しやすいものを除菌することをおすすめします。
※共用部へのコロナウイルスの侵入を完全に遮断することは不可能であるため、共用部と専有部の2段構えで対策するという意識が大切になります。
コロナウイルス撃退のため、消毒しておきたい共用部の例&
エレベーター | かご内はもちろん、ボタンは多数の人が触るために要注意。 ※ビニールなどでカバーして養生したのち、消毒液を噴霧するなど。 |
階段室 | 密閉されていることが多いため、手すりなどを重点的に消毒。 |
ドア | エントランスや階段室、その他共用部はもちろん、各住戸も。 |
カウンター | 管理室やコンシェルジュの受付カウンターなど、人が集中しやすいため要注意。 |
メールボックス | 郵便やチラシの頒布など、不特定多数の人も関わりやすい。定期的な消毒が望ましい。 |
動線の絞り込み
マンションへの出入り口などが複数ある場合に特に有効なのが、「人の動線を絞り込む」という作業です。
サブエントランスや敷地に直結する階段室など、マンションの構造にはさまざまなパターンがあります。
コロナウイルス感染拡大への対処として、
・出入り口の使用を制限して数を減らす
ということも有効になります。
建物に出入りする人の動線を絞り込むことで、消毒液も効果的に設置できますし、定期的に消毒すべき空間や部位も明確になります。
※あまりにマンションの利便性を損なうような絞り込みは考え物ですが、緊急事態宣言が継続している間はサブエントランスを使用不可にするとか、エレベーターホール前に簡単なバリケードなどを設置して消毒液の使用を意識づける、といった物理的な絞り込みも今後必要になる可能性があります。
まとめ
新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、管理組合として取り組みたい内容の一部を紹介しました。
・マンションは閉鎖的な空間であり、避けられないリスクがあることを正しく理解する
・自分のマンションにおいて消毒すべき箇所を把握する
・外部からマンション内にウイルスを持ち込まないこと意識する
などは、特別難しいことを要求するわけでもありませんし、管理組合の皆様で共有し、意識的に取り組みたいところです。
外出の自粛やテレワークの推奨などが声高にうたわれていても、現実には様々な事情からその通りにすることができない方もたくさんいます。
その中で、今回紹介したようなできる限りの対策をしっかり行うことが、最上にして必須の取り組みだと私は考えます。