新型コロナ緊急事態宣言①|管理組合のとるべき対応について
Writer’s Nest(ライターズ・ネスト)代表WEBライター&マンション管理士の吉田です。
新型コロナウイルス対策のため、2020年4月7日に東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡へ出された緊急事態宣言。
そこから約2週間を経たずして、対象範囲が全国に広げられることとなりました。
今回は大阪でマンション管理士として活動する私が、
「新型コロナ関連で管理組合の皆様からよくご相談を頂戴すること」
をテーマに取り上げました。
国内で高まる自粛ムードに暗澹とした気持ちになり、ここから先がどんな状態になるのかと不安に思われている方も多いことでしょう。
※理事会、総会の開催など、管理組合の運営に悩む理事の皆様の背中を、少しでも押すことのできる記事にしようと考えて執筆しました。
特に、お近くでお気軽に相談できるマンション管理士などがおらず、
「総会の時期が迫っているけど、どうしたらいいの?」
「理事会を開きたくても、コロナのせいで反感を買いそうで怖い…」
とお悩みの方は是非お読みください。
マンション管理組合における最大のコロナ対策:『無理をしないこと』
マンション管理組合においてこの新型コロナ対策として行えることは、ズバリ
「無理をしないこと」
です。
3月~5月は、マンション管理組合の決算や総会の開催が集中しやすい時期です。
このタイミングで新型コロナが日本においても猛威をふるい始めたせいで、3月ごろから
「理事会や総会を中止・延期にしたいけれども、開催しなくてはならないのか?」
という相談を頂戴することが増えています。
そして、そこに対する回答としまして、私は開口一番
「無理をしないでください。」
とお伝えすることにしています。
月に1度の理事会、毎年●月に開催している定期総会、というルールに縛られて開催した結果、万一のことが起こってはいけません。
まずは皆様の生命の安全を優先すべきであることは間違いありません。
理事会・総会の延期と標準管理規約の関係
標準管理規約では、その第42条第3項において
“理事長は、通常総会を毎年 1 回新会計年度開始以後 2 か月以内に招集しなければならない。”
という風に規定されています。
しかし、これはあくまで規約でありルールであって、「絶対にこの規約を守らなければ罰則を受ける」というものでもありません。
今回のように新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためだとか、あるいは地震や大型台風による被害などにより、この規約の通りに総会を開催できないということは十二分に考えられます。
それこそ、3月上旬ごろまでは国内であまり危機感を覚えている方が少なく、
「大事をとって理事会・総会は中止にしておこう」
という程度のものであったはずが、どんどんと事態は深刻化の一途をたどり、今や逆に
「こんな時期に会合を開くとは何事だ」
ということになっています。
※これはこれで大切なことではありますが、極端な反応は考えものですね。
区分所有法ではどうなっている?
総会については区分所有法で
第34条2項:管理者は、少なくとも毎年一回集会(管理規約でいう”総会”)を招集しなければならない。
第43条:管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
と定められています。
区分所有法は法律ですから、規約よりもう一段階強い力を持って、区分所有者を従わさせるものだと言えます。
(『区分所有法という法律のルールが大前提として与えられており、その枠内で管理規約を定めて運営する』という形ですね。)
しかし、ここで規約とよく読み合わせてみると、
・規約では「毎年 1 回新会計年度開始以後 2 か月以内」
・区分所有法では「少なくとも毎年一回」
という風に定められていることに気づきます。
つまり、
「管理規約で〇月に総会が規定されていたとしても、区分所有法が定めているのはあくまで年に1回の開催である」
ということになります。時期については明言されていないのです。
すなわち、
「うちのマンションは毎年5月に総会を開くことが定められているから、今年も絶対にそうしなきゃいけないんだ!」
と強迫観念にかられる必要はないのです。
絶対に無理しないでください。まずは区分所有者みなさまの安全が大切!
3月に発表された、
“マンションの管理組合等における集会の開催について”http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00024.html(法務省)
によれば、
「前年の集会の開催から1年以内に区分所有法上の集会の開催をすることができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後,本年中に集会を招集し,集会において必要な報告をすれば足りるものと考えられます。」
とされています。
要するに、本当に「無理しないでください」ということなんです。
理事を引き受け、しっかり組合を運営していきたいとお考えの方は、基本的にまじめで責任感が強い方多いため、
総会や集会もルールにのっとって開催したいという意向を強くお持ちの方が多いと思います。
あるいは、これまで総会でクレーム的なことがあった(理事になる前に過去の総会で見てきた)ために、ルール通りの組合運営に過敏になっている方もおられることでしょう。
しかし、ここで焦って理事会・総会を開催して、「こんな時に開催するの?」「うちのマンションが感染者だらけになったらどうするの?」というトラブルに発展することは誰しもが避けたいものです。
逆に、「なんで開催しないの?」という意見がもし出てきたとしても、「区分所有者の皆様の安全を考えてのことです」と説明できます。
厳密にいえば規約違反や法律違反になることがあるかもしれませんが、これも新型コロナウイルス対策の特別措置法による緊急事態宣言を受けてのことです。
多くの人命に関わることであるがため、ここでの柔軟な対応が何よりも大切だと考えます。
そもそも共同住宅において、より良い住環境を作るために管理組合があるわけです。
その管理組合の運営にとらわれて、人命が危険にさらされるようなことがあれば本末転倒です。
もし本当に急を要する決議事項があるならば、それだけでもなんとか特別総会を開いて、ほぼ議決権行使書だけで決議するという手段も取れます。
(電磁的方法での議決、ということになると、それはまた話がややこしくなりますが…)
※ちなみに総会を延期する場合、できるだけ開放された場所で最低限の理事会を開いて、総会延期の決議を取っておく
ということがベストです。
議題は
- 総会の延期(ひとまず時期は決めずとも良いです)
- 新型コロナの緊急事態が落ち着くまでの間の理事会延期
程度にとどめておき、事前に理事に理事会開催の経緯を説明するビラなどを配布しておけば、超短時間で理事会を終わらせることもできます。
今はとにかく耐えるしかない時期なんです…
思えば、このコロナ騒動を受けて、
「これまでこうだったから、今後も当然同じようにしなければならない」
ということについて、改めて見つめなおしてみる機会が不意に与えられていると思います。
これは、管理組合の運営だけでなく、仕事や生活のあり方も含め、今やいろいろなことに当てはまりますね。
私個人としては、2年ほど前からテレワークというか在宅作業が多い生活に一足早く突入していたため、仕事のうえで特にやりづらさを感じることはあまりありません。
とはいえ、応援で参加する消防設備点検のキャンセルが相次ぐとか、入室を拒否されるというやりづらさは非常に感じます。
ひとまずはこのコロナ騒動を無事に乗り切り、またこの騒動中にいろいろとブラッシュアップされた考えや方法が、今後の私たちの暮らしをより良いものにさせてくれるよう、じっと耐えて準備するしかないのかもしれませんね。
総会や理事会に限らず、いろいろなことを中止・延期したところで、事態が落ち着けばその分のしわ寄せが絶対にやってきます。
その時に備えて、今できる限りの準備をしておくこと。体力を養っておくこと。
それが今、必要とされていることなのだと思います。