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ビートルズというバンドがすごい3つの理由

コラム 前田健太

言わずと知れた4人組ロックバンドのビートルズを題材にした映画『YESTERDAY』が2020年8月現在Amazon Primeで配信されています。

僕もビートルズのファンの一人としてもちろんこの映画を見ましたが、最高に面白かったので、是非見てみてはいかがでしょうか。

この映画が話題になったことにより、ビートルズが再注目されたものの、やはり彼らの全盛期からもう半世紀以上も経ってしまうと、若い人に「何がそんなにすごかったの?」と聞かれることもあります。

クリエイションに携わる人間としては、音楽やファッション、映画や思想にまで影響を与えた彼らの活動から学ぶところは非常に多くあります。

そこで、ビートルズのすごい点はたくさんあるのですが、すごかった3つのポイントを挙げて解説していこうと思います。

ビートルズとは?

ビートルズは、1960年代にイギリスで結成され世界中で活躍した4人組のロックバンドです。

メンバーはベースのポール・マッカートニー、リズムギターのジョン・レノン、リードギターのジョージ・ハリスン、ドラムのリンゴ・スターの四人です。

ほとんどのソングライティングをポール・マッカートニーとジョン・レノンの二人で行っており、作詞・作曲の名義は「レノン=マッカートニー」として登録されています。

ジョージ・ハリスンは高い演奏力からギタリストとして外部ミュージシャンとの共演やプロデュースなどを積極的に行っていましたし、リンゴ・スターはコミカルなキャラクターを武器に俳優としても活躍するなど、ビートルズの活動は音楽だけにとどまりませんでした。

日本でも大人気であったということを証明するエピソードとして、ビートルズの日本公演では武道館で3日間にわたり5回の演奏が行われました。

総観客数は5万人と言われていますが、武道館のキャパシティが14,000人ほどであると考えると常に超満員だったことがわかります。若い女性を中心に多くのファンを集め、中には興奮のあまり失神してしまった方も多数いたと言います。

そんなビートルズの前座として、日本から迎え撃つように演奏を披露したのが内田裕也さんやドリフターズが前座でした。

 

このように世界中で大人気だったビートルズですが、1970年にビートルズの中心人物でもあるポール・マッカートニーと他のメンバー3人が衝突し、解散してしまいました。

メンバーそれぞれがソロで活動をする中、1980年には『イマジン』などのヒット曲を送り出し、反戦運動家としてソロ活動でも大きな注目を集めていたジョン・レノンが自宅の前でファンに射殺されたことは全世界に大きな衝撃を与えました。

【ビートルズのココがスゴい!】その1:最初の「シンガーソングライター」

ビートルズが何故すごいかというポイントをひとつずつ解説していこうと思います。

まずは「シンガーソングライター」という概念をつくったのがビートルズと言われているという点です。

当時の作曲手順

当時の音楽シーンでは、「歌手」「演奏者」「作曲者」「作詞者」と役割が細かく分かれていました。

「有名な作曲家の先生を使わないと!」という利権の関係や、著作権や印税の関係などがあったのかもしれません。

しかし特に誰も疑問を持つわけでもなく「そういうもの」として一連の制作を分業することが音楽業界では常識となっていました。

ジョン「自分たちで作りたい」

しかし、ビートルズの4人の発想はそれまでの利権や業界のタブーを打ち破る革新的なものでした。

ビートルズがいざデビューするに際して、作曲家を用意するからその曲を歌うようにとレコード会社から指示があったのは事実です。

しかし、ジョン・レノンはそのオファーを断り、「自分たちがオリジナルでなければやらない」という条件を叩きつけたというのはファンの間では有名な話です。

「シンガーソングライター」という概念

今ではシンガーソングライターと言う言葉は、「1人で活動している歌手兼作曲家」というイメージが一番強いのではないかと思われます。

秦基博さんや森山直太朗さん、絢香さんやあいみょんさんもシンガーソングライターというジャンルでくくられることが多い様です。

しかし、もともとはビートルズの様に1人であるかグループであるかに関わらず「自分で曲を作って自分で歌う」人のことをシンガーソングライターと呼び始めたことによるものでした。

ビートルズが自分たちで作曲をして演奏をして歌うという手法は当時としては斬新で、もちろん高名な作曲家の先生を抱えるレコード会社からも「何故先生を使ってさしあげないんだ!」と圧力があったと言います。

しかしあくまでもオリジナルに拘ったビートルズのスタンスは、現在の音楽シーンでは最もポピュラーな形になっていると言えるでしょう。

このあたりの当時の音楽システムなどは、かわぐちせいじ先生の『ぼくはビートルズ』というマンガにも詳しく描かれているので、興味のある方は是非読んでみてください。

【ビートルズのココがスゴい!】その2:斬新なものつくり手法

音楽業界のシステムにも革新をもたらしたビートルズは、制作においても革新的な手法を用いていました。

ビートルズが行っていた制作手法などを紹介します。

マルチ・トラック・レコーディングを発明

現在のレコーディングでは、ドラム・ベースなどのリズムトラック、ギターやピアノなどの伴奏トラック、そしてボーカルというように、それぞれのパートに分けて順番にレコーディングしていく、いわゆる「マルチ・トラック・レコーディング」が主流となっています。

それぞれのパートが独立しているので、歌詞を間違えた場合は歌だけを録りなおせば済むなど、マルチ・トラック・レコーディングが出来るシステムの発達によって、クリエイションはどんどん楽になってきました。

しかし、ビートルズの時代は現在の様にマルチトラックレコーディングの手法はなく、バンドが一斉にレコーディングルームで演奏し、OKテイクが出るまで何度も演奏するが通常でした。

しかし、一度録音したテープを再生しながら、その上からさらに演奏を重ねて録音するという手法を編み出したのはビートルズだったと言われています。(ただしビーチボーイズも同時期に同じ手法を使った作品があるため、その先後は不明)

諸説あるようですが、もしこれが本当なら後の音楽業界に想像を絶するほどの影響を与えたと言っても過言ではありません。

もうすべての音楽家はリバプールに足を向けて眠れませんね。

前衛的な制作手法

ビートルズの、その時代としては前衛的で誰も思いつきもしなかった制作手法は他にもたくさんあります。

ヘッドホンやスピーカーなどは人間の耳に合わせて左右に分けてあり、アンプの位置やドラムの聞こえ方を調整して実際にライブを見ているような位置関係で聞こえるように設定することができます。

これを「パン振り」と言いますが、ビートルズはこのシステムを逆手に取り、本来ならステレオの中心に配置するドラムセットを完全に左のスピーカーから音が出るように寄せてしまっている曲などもあります。

他にも、ベースのパートだけを声で録音したり、挙句の果てにはテープをバラバラに刻んでそれをランダムに張り合わせて流すなど、今では考えられないほど前衛的で実験的な創作をしていたと言われています。

当時は前衛的だった手法が現在ではスタンダードに

当時は音源を記録する媒体と言えばレコードやテープでしたので、録音した音を後で編集するということはほとんどできませんでした。しかし、現在ではパソコンのソフトを使って音楽を手軽に編集できるようになりました。

逆再生トラックを作ることなんて2クリック程で出来てしまうほど標準的な機能として備わっていますが、このように今でこそ当然と言われている様な手法も、何も無い状況から先人たちが手探りの中で築いてきたものなのです。

そう考えるとビートルズが好きか嫌いかなどという話よりも、それらをも超越した「感謝」という感情が芽生えてくるのではないでしょうか。

【ビートルズのココがスゴい!】その3:数々の記録

純粋にレコードの売れた枚数に関して言えば、(正確にはわかりませんが)10億枚近くと言われています。

マイケル・ジャクソンやレッド・ツェッペリンなどもたくさんの有名な作品を出していますが、それらをも凌いで堂々の1位に君臨し続けています。

また、ポール・マッカートニーが夢の中で作曲したと言われている『イエスタデイ』はギネスブックに「最も多くカヴァーされた曲」として記録されており、ビートルズのベストアルバム『1-ONE-』は世界34か国でランキングの1位を獲得しました。

音楽や芸術などの業界で、あまりに前衛的なことをしたり実験的なことをし過ぎると、それは一般の人には受け入れられがたく、その結果商業として成立しにくいことがほとんどです。

それでもビートルズは、斬新で実験的な創作をしながらも人気を得るという両方を成し遂げた非常に稀有な存在です。

つまり、彼らの数々の記録はただ商業的に成功した、人気があったというだけでは測れない価値のある記録であると考えます。

まとめ

YouTubeやサブスク、ストリーミング配信がポピュラーになってきた時代で、「レコードの売り上げ」で競うのも野暮なことかも知れませんが、今後ビートルズの記録を破ることができるバンドは出てこないかも知れません。

そしてそれ以上に、現在では常識となっているようなシンガーソングライターという概念、そしてレコーディング手法彼ら自身のブランディングなど、彼らが既存のものに捕らわれず型を破ったからこそ生まれたものです。

彼らの活躍以降、数々の優れたバンドが世に輩出されていますが、やはりパイオニアとして時代を牽引したという点ではビートルズから学ぶことはまだまだ多くあります。

音楽に限らずクリエイションやビジネスにおいてももっと革新的なものを目指す方は、ビートルズについて深く研究してみてはいかがでしょうか。

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